楽で楽しく続けられる営農コミュニティ

共創されたポイント
※ 更新:2017年5月17日

生きがい豊作地帯を目指して、営農をあと10年続けられるコミュニティづくり

奈良県下市町では、高齢営農者があと10年営農を続けられるコミュニティ環境を整えることで、現役営農者の生きがいにつなげると同時に、農村コミュニティを次の世代に受け継ぐことを目指した取り組みが進められています。中山間に位置する下市町で、”柿” が主産物である栃原地区から、公民学産の対話のもと、「楽で」「楽しい」営農を実現する「らくらく農法」が生まれました。大きなテーマに営農を据えながら、ひとつの視点だけではなく、多様な角度から高齢営農コミュニティの課題解決策が創出されています。この取り組みは、いろいろな形で近隣地域へと広がっています。

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らくらく農法

当初、取り組みの主な舞台となった栃原地区は、柿を中心とした果樹栽培が盛んな地域です。重い果実であり、かつ畑が急傾斜地にある柿栽培を基盤に、たとえ高齢営農者や定年帰農者、新規参入者でも無理なく続けることのできる環境を整備し、農村の活性化策が打てるよう、開発されたものがらくらく農法です。こうした農村環境のバリアフリー化を通して、農村コミュニティの継続的な活性化につなげることが大きな狙いです。

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柿畑での収穫の風景
傾斜は約20度。かご1つで5㎏を越えることも。
「営農を支える」
柿栽培を続けたいという思いを大切に。

4つの視点から農村環境のバリアフリー化へ

栃原地区のらくらく農法は、柿の栽培、営農で酷使した身体、運搬を助ける機械、そして暮らしを支える集落といった視点から展開されました。農村コミュニティの活性化に向けて、幅広い視点から取り組めることが、徐々に明確になってきました。取り組みの入り口は多様です。


4つの視点から生まれた活性化策

4つの視点から、様々な農村活性化のためのツールが生み出されました(下図参照)。これらのツールは、地域の特性に合わせて、多くの地域で応用が可能ではないかと考えています。また、こうした取り組みをまちぐるみで推進する上では、横断的な体制が欠かせません。取り組みが進む中で、下市町では地域づくり推進課という横断的な部署が立ち上がり、取り組みを包括的に支援する体制が整備されました。

らくらく栽培 (農学)

負担の少ない柿の葉栽培技術と、柿の葉寿司を念頭に置いた事業化まで展開。農事組合法人も立ち上がり、経営安定化支援も。

電動運搬車 (工学)

地元企業と協働で、営農者の意見を取り入れた運搬車を開発し、三輪タイプを製品化。電動で、操作性・安全性が大幅に向上。

らくらく体操 (スポーツ科学)

柿営農者のからだの強張り、農作業の体勢に合わせて、からだをほぐす体操を作成。体操DVDはまちぐるみで作成。町営TVで放映中。

集落点検手法 (社会学)

集落単位で畑の現状・将来の見通しに加え、家族の状況(他出子の状況等)や伝統・文化について、話し合いながら幅広く見える化し共有。


らくらく農法のきっかけ

地域の高齢化、重労働な柿栽培。農村コミュニティの将来に危機感を感じていた栃原地区の自治会長が、奈良県果樹振興センター(現在は「奈良県果樹・薬草研究センター」)を訪れたところから始まりました。そこから、それまで培っていたネットワークが活かし、研究者(社会学・スポーツ科学)・地元のものづくり企業に声をかける中で、”農村の高齢化対策” ”農村コミュニティの活性化処方箋”といった課題と目指す成果をカタチづくり、それぞれの視点から対策を検討するコア体制が整っていきました。


らくらく農法を通して共創された成果

具体的なアクションを通して、上にあげた様々な活性化処方箋が生まれました。電動運搬車は更なる進化を遂げ、集落点検も使いやすい簡易版を検討しています。さらには、集落点検で発掘した”里芋おはぎ”をアレンジした”ごんた餅”や柿の葉寿司を通して、新たな世代間交流も生まれています。また、集落点検で得られた経験を活かし、町でも「元気印集落事業」を開始。他の地区へと地域の活性化は広がっています。

下市町と奈良女子大学は包括的連携協定を結び、文部科学省のCOC+ /地(知)の拠点大学による地方創生推進事業にも参画。町の協働体制は強まるばかりです。